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五千年前:一日目
 名も知らぬ島:一日目・昼 晴

人が多い。



(↑…一ページ目終了)






 ******






 かつん、かつん。
 無機質な音が小さく、遺跡内に響いた。
 しかし雑踏の中で、そんな音はすぐにかき消されてしまう。

 ――遺跡の中には人が多い。

 ユルレは、遺跡の入り口を見つけ、入るためにその階段を下りた直後、一瞬で理解した。
 いろんな意味で出遅れた、と、本当に一瞬で理解した。

 ――人が多い。

 階段を下りるその時でさえ、遺跡から出ようと階段を上っていく者とすれ違い、その下を見てもそれはもう普通に他の冒険者たちが歩き回っている。親しげに会話を交わしている者達もいるし、なぜかどこからか、カン、カンと、何かを叩く音すら聞こえてくる。聞きなれた音に剣を叩き直しでもしているのだろうかとも思ったが、
(何で態々こんな所で遣るのか)
 ユルレは少々呆れ顔になった。……しかも一箇所からだけではない。他のところからも何かを作り出したりしている音が遠くから近くから聞こえてくる。もしかすると、これがこの地の常識なのかもしれない。
 ユルレは言った。

「帰るか」
(「早ッ!?」)

 即座に隣で浮いていたネイドが反応した。
(「来たばっかじゃねーかよ! 外はあんだけ熱心に探索しといて中に入った途端にそれか!?」)
「人が多い」
(「それは分かった!」)
「この辺はあらかた、他のガキどもにめぼしいモンは取られてそうだ」
(「……まあ、それはな」)
 ユルレに指摘された点は考えていたらしく、ネイドはちょっと目を逸らした。
 逸らしてから、ぽんと手を叩く。
(「じゃあ、ちょっとひとっ走り奥のほう見てくるぜ。招待状が配られたのは皆割と最近らしいし、まだ皆そこまで行ってねーから今ここでこんなに多いのかも知れねー」)
「……まあな。……じゃあ、行ってこい」
(「おうよ」)
 得意げに笑うと、ネイドは向かって右の通路へと消えていった。
 ユルレは階段の一番下の段に腰掛け、彼を待つついでにと『招待状』を懐から出した。
 ――この招待状は無茶苦茶だった。何しろ本来、自分たちに来る筈のものではないのだ。
 『この時代』では、ユルレたちは過去の人間だった。永来を生きるユルレは大体数えで五千年ほど生きていたが、
(『ここ』は、『今』から更に五千年も経ってやがる)
 合計すると一万である。いくらなんでももう『この時代』に『ユルレ』はいないだろうと、ユルレは思った。いて欲しくもない。いるということはつまり、まだ自分は最低でも五千年生きなければならないということなのだ。
 『招待状』は、そんな彼の元に届いた。勿論今から五千年前、普通に道なき道を旅していた彼の元にである。そして問答無用に引っ張られて(何に、とはいわない)この様だ。ユルレは周囲を見渡した。パーティというらしい、数人でこの遺跡の地図であろう紙を見ながら歩いていく少年少女の姿が見える。たまに動物のような格好をした者やそもそも生き物かと疑いたくなる姿の者もいたが彼は見ない振りをした。ユルレは足を組みなおし、ちょっと溜息をついた。
 ネイドが戻ってきた。
(「案の定だぜ。ここは遺跡のまあかどっこでさ、反対側には入り口もないのか殆ど人がいねーんだ」)
「そうか」
 ユルレは招待状を畳み直し懐に仕舞うと、荷物袋を持ち立ち上がる。そして先程ネイドが遣ってきた方向を見た。
「右しか調べてねえのか」
(「左も似たようなもんだぜ」)
「……」
 ユルレは木の棒を取り出した。先程遺跡の外で、草を摘むついでに拾っていたものだ。地面に立たせ、手を離し、倒れた棒の先を見た。
「右か」
(「待てい」)
 即座に右に進もうとしたユルレを傍観体制だったネイドが止めた。
「どっちへ行っても同じだっつったのはてめえだ」
(「いや、そうだ、そうだがな! ……お前もこんなお茶目するようになったんだなあと、ちょっと思ってな……」)
 何故かしみじみと言い出すネイド。ユルレはとっとと進みだした。
(「あ、ちょっと待てよ!」)
 あわててネイドが追いかけていく。






 ******






(隣のページに、明らかに違う人間が書いたと分かる文字で)



 名も知らぬ島:一日目・夜 少し雲が

…んの野郎、早々に「日記が面倒だ」とか言い出しやがった。
ちょっとしか書いてないじゃないかよ!
なんだかもう情けないので、仕方なく俺が代わりに書くことにした。
手だけとはいえ、ペン持てるまで実体化させるのって大変なんだぞ、畜生。
書かなきゃいいってだけな話なのは分かってるけどな。
使ったページが初めだけの日記帳って寂しいだろ?

ユルレはどうやらもうちょっとこの辺を調べるつもりらしい。
最近にしちゃあ珍しく、意欲的に行動してるように見えるけど
……まあ、暇なだけなんだろうなあ……

(ちょっと微妙な気分になったのか筆跡が薄くなっている↓)
遺跡の外観を調べる道すがら、何故かその辺の草を引っこ抜いては荷物袋に突っ込んでいた。
パンの欠片も拾っていた。
……あまつさえ食べだす始末だ!やめてくれ!見てるほうが惨めな気分になっちまう!
そう言ったら、何て言ったと思う。
「まずくはねえ」だと。んなこた聞いてない…聞いてないんだよ…!
(最早消え去りそうなほど薄い!)
俺は言い返した。ああ言い返したよ、「持って来た携帯食があるだろ!?」と!
冒険者の常識だ、ないなんて言わせないと、それだけの気概を持って言ったつもりなのに、奴はさらりと言った、「ない」。
……
書いてて虚しくなったのは、俺のせいじゃない……
そりゃ食わなくてもどころか何しても死なないのは俺が一番分かってる、分かってるけどな……!
こういう時にあの子の情け容赦ないセイントランが欲しいと切実に思った。いや、本当、俺じゃ無理だ。

でも、さらりとないなんて言い放った奴にも一応の言い分があった。
島に着くまでは持ってたそうだが、島についたとたんかき消すように消えちまったらしい。食料だけが。誰かにスられたとかは俺が見ている限りなかったから、島の魔力がそうさせたのかもしれないが、……いや、なんで食料だけ。見せてもらうと確かに武具やロープやランタンは普通にあるんだよな。この人が溢れかえった遺跡周辺を見る限り、島もしく遺跡が人を拒むわけでもないようだし、
んー…●(ペンを押し付けたまま考え込んでいるのかインクの染みが滲んでいる)おっと。
誰か(例えば、招待状を寄越した誰か)の陰謀(偽の招待状を寄越してのこのこやってきたバカどもを云々、とか)で来た人来た人餓死させる目論見……いや、この島ざっと見ただけでも食えそうなモンがいっぱいあるし。よほど場慣れしてない、まあ深窓のお嬢様ぐらいでなきゃそんなことにゃならないだろうし、ああでも皆食いついて食料になりそうなの何もなくなったらその限りでもねーか、…そもそもユルレ以外の奴も食料取られた、なんて聞かないしな。単純に俺が聞けないだけなんだけど。
……って、ふと見ると他の奴も草とか食ってるよ!
せ、せめてその辺の木から食えそうな木の実を取るとか…!ほらあそこになってる赤いのならちょっとすっぱいけど十分食えるから、
…日記に書いても意味ないんだけどな…!でも話しかけるのはちょっと、ごめん、俺には無理だ。勘弁して。

代わりにユルレに実の存在を言ってみた。…その実もちょっと食って荷物袋に入れようとするもんだから止めた。柔らかいから多分荷物袋に入れたらすぐ潰れる。
代わりに俺が頂…こうとしても無理だったからユルレに無理やり食わせた。…うう、食物をかみ締める幸せが味わえないって、必要なくても妙に辛い…
(またちょっと筆圧が弱くなってきた)

荷物袋を覗き見ると、流石に探索道具とごっちゃにしてるなんて事はなかったらしく、ちゃんと食料袋として別に皮袋が入っていた。…当たり前か。
覗かせて貰うと、まあ、…草とかパンのくずとか。
……

…………その辺の獣でも狩ってやるべきか?



(二ページ目終了)
| 日記 | 00:20 | comments(0) | -
五千年前:二日目
 名も知らぬ島:二日目・昼 雲

……んがあー、眠い!
必要なかろうがなんだろうが、眠いもんは眠い!
俺は夜行性なんだっつーの!

…昨日は結局徹夜だった。食料調達やら探索やらで結構時間食ったんだよな。ユルレの野郎は遺跡の外で爆睡してたけど。
見つけたのっつったら、階段すぐ下にあった二つの魔法陣と同じ形の数個、妙に濃い顔をしてもっさー言う…えーと…得体の知れない物体?…いや、雑草とか言ってたけど、嘘だろアレ。と、それから、…遺跡の中、地下一階のはずなのに何故か森とか山とか。あれ…?遺跡…だよ…な?な?水ならまだ分かるんだけど、壁や天井や床に這った木の根なら分かるんだけど、天井って言うか地上から割れ目を通って落ちてくる砂が小さな山を作るならわかるんだけど、…あれ…?
……どうもここは俺の常識では通用しないみたいだ。別次元?この遺跡のある特定の地点だけが別次元なのか?
とりあえず、ユルレを起こそう。もうこんな時間だ。



 名も知らぬ島:二日目・昼 少し光が

眠い。起こされた。起きた。真上に太陽がある。眠い。
起きたおれの横で(といっても、かなり遠くにだが)、同業者らしきガキどもが遺跡に続く階段を下りたり、別の奴が唐突に消えたり、かと思えばまた別の奴が現れたり、それが繰り返されている。魔法陣とか言うやつだろうか。
……それにしても、元気だな、他の奴らは。
急ぐ用事でもあるのか。



(三ページ目終了)






 ******






 何だあれは。

 ユルレはもう一度思った。何だあれは。
 ついでに目を擦ってみた。それから目を凝らしたが、目に映るものには何の変わりもない。
 彼はちょっと首を傾げてから、右を向いて言った。
「何だあれは」
(「俺に聞かれても……」)
 困惑した様子でネイドが答えた。
 ユルレはもう一度目を凝らした。草原を彩る(いや、そもそも本来はその色しかないのだが――そしてさらに本来はこんなところに草原があること自体おかしいのだが)緑に、異質な青が混じっている。しかも一つではない。他の色も混じっているが、それは他の冒険者だろう。どこか薄汚れたその青は、よく見ると何かの生物であることが分かる。形からして犬か狼の類だろうが、それにしても。
「何だあれは」
 ユルレはもう一度言った。
(「………………犬?」)
 何とかネイドは答えた。それから音を立てずそっとその犬らしきものの近くへ飛び、気付かれないように上から(何せ彼は飛べる)顔にあたる部分を眺め、そしてユルレの元へ戻る。首を傾げた。
(「………………犬だ」)
「犬か」
 近くまで行って観察しての結論なら納得するしかないが、いやしかし。二人は顔を見合わせた。全身青い毛の犬など聞いたことがない。しかも遠くで見たユルレは気付かなかったが、何やら赤いオーラすら放っているのだ。今の時代ではこの色が普通なのだろうか、そう思ってから二人は同時に青いそれを見た。なんとも毒々しい。
「……喰えるのか?」
(「喰う気かよ?」)
 ネイドの反応はいつも早い。
「草やパン屑だけで過ごすのもちょっとな」
(「……まあなあ……」)
 二人して、ユルレの持つ荷物袋に目をやった。彼は野菜より肉が好きだ。もう一度犬を見た。
 結論は早かった。

「狩るか」
(「よし了解」)
 早いな、というツッコミはなかった。






 ******






 名も知らぬ島:二日目・夕方 晴

昼間、日記が見当たらないなー(とりあえず昨日から、俺の荷物袋に入れることにしたんだよな)とか思ってたらユルレに取られてたらしい。いつのまに。スリとかできるんじゃないかあいつ。俺より上手く。
しかもちょっと書いてた。書いてたけど
…ひょっとして開始二日目にして既に目的忘れ去ってるんでないだろうか。
そうそう、犬っぽいのを見つけたんだ。今そっと機を窺ってる最中。……なかなか隙を見せねー…んだけど…
つうか、ホントに喰う気かなあ。(確かに俺も即了承したけど、だって今の食料らしきものって草とパン粉だけだぜ、惨めったらありゃしない)
なんとも体に悪そうな色してるんだけどなあ。
あんなのに限って実は美味とか、そんなだったらいいんだけど、まあそれはねえよな…
食うのは俺じゃないってのが唯一の救いだ。



 名も知らぬ島:二日目・夜 星空

――忘れたわけじゃねえんだが。
どの道只の暇つぶしだからして、おれ自身としてはそう急ぐべき問題でもない、それだけだ。
七つの宝玉とか言うのが其々一のみしかないという根拠があるわけでもないだろう、気長にやりゃあいいんだ。
まあ、早い者勝ちだと初めに言われようが、急ぎはしなかったろうが。

昨日進んだときに見つけた魔法陣を思い浮かべ(ると、その魔法陣のある地点に飛べるらしい。原理が気にはなるが、わざわざ調べるのも面倒臭い)、飛んだ地点から更に西(の筈だが、この常識が通用しない遺跡の中で磁針が正しい役割を果たしてくれるかは不明だ。例えぐるぐる回ったりと方位が安定しなかろうが、これを手放すのはもうアホとしか言いようがないが)へと進む。少し行くと硬質な石の床が青々とした緑色に変わった。草原(くさはら)、否、草原(そうげん)だ。天井高き遺跡の下、陽光とてこんな薄ら寒いところに来はしないだろうに、根を張る土とてそうあるわけでもなかろうに(ネイドが言うには森すらあるそうだが、生憎おれはこの目で見てはいないのだ、俄かには信用し辛い)、こいつらは何を栄養にして育っているのか。
冒険者やその獲物が落とす血か。いや、それならもっと色が赤いか。
…まあ、おれには関係ない。

そういえば、クリスマスだとか周囲がやたらと煩かったんだが、(今で言う昔とやることが同じなのかは知ったことではないが、おれらの結果は今更言うまでもない)
だとすればもう年明けか。



(四ページ目終了)
| 日記 | 00:19 | comments(0) | -
五千年前:三日目
 名も知らぬ島:三日目・朝 わからない

今、俺は遺跡の天井あたりに陣取ってこの日記を書いてるんだよな。
何でってその
まだ下降りたくねえし。

徹夜(だと思うけど遺跡外には出てないから絶対に徹夜したかと聞かれたらちょっと答えられない)でじりじりと互いに様子見してた犬とユルレ、鶏が一声を上げる時間帯(だと思うけど遺跡外には…もう略することにした)になってようやく動き出した。
今俺の下で戦闘の真っ最中。
犬相手にマジな顔で剣を構えるユルレさん……いや、俺は何も言うまい。
あ、ばか、その体当たりは避けられるだろ、とかばか犬って素早いんだぞー!とかツッコミ入れてるうちに勝負はついた。ユルレの決め台詞と共に草むらに崩折れる犬。
その犬の傍に座り込んでなんか拾った。なんだあれ、白いな。んー、石だ。白い石を入れ



――、あれ、何で俺白い石なんて書いたんだろう。白い――牙みたいだ。とりあえず荷物袋に入れた。それから俺を呼んできた。あ、ユルレがな。
オーケーオーケー、ここからが俺の出番。
よーっし、捌くぜー!

……何してんだろうなあ、俺ら。



 名も知らぬ島:三日目・夜 不明

とりあえず腹は膨れた。
次の獲物も犬



――だ。
見目に反して不味くはなかった。
なら立派な食料だ。
少なくともおれにとっては。






 ******






(「……何か、おかしいんだよな」)
 ネイドがユルレの荷物袋を見ながら、ぽつりと呟いた。
「どうした」
(「いや……」)
 そして平原の彼方を振り返る。今いる地も平原(ただし生える雑草の高さは身長の半分ほどになっている)だが、先程犬(のようなもの)を仕留めた地点ではなく、そこから遺跡本来の硬質な床を挟んだ別の平原である。
 ネイドはもう一度ユルレの荷物袋、正確にはその中に入っているだろう小さな牙を見た。
(「……俺、やっぱり白い石を見たような気がするんだよ」)
「そうか」
 ユルレは荷物袋を見ることなく、追い続けている次の標的を見た。
 其れは一瞬、否、一刻程前まで、確かに(いや、恐らく)狩った犬と同種の獲物だった筈だ。
 しかし今彼の視界に映るのは、緑色の肉体も生々しい「何か」。
 ネイドが調べたところによると、あれは「歩く雑草」らしい。

 ユルレは目を細めた。
| 日記 | 00:18 | comments(0) | -
五千年前:五日目
 名も知らぬ島:五日目・朝 光が見えた

今日は大乱戦だってさ。
俺は見物に回って、ユルレが出場することになった。
何か知らないけど、3人でパーティを組むトーナメント制なのかな。

ユルレと組む二人は両方とも一応顔見知りだ。
所謂研究者然とした謎のひとと剣士っぽい癒し系。
どちらもこの遺跡に来てから話しかけられたんだけど、
……剣士さんのほう、俺どっかで見かけたことあるような気がするんだけどなあ…
気のせいか。

ところで、やる会場はどこだよ。



 名も知らぬ島:五日目・夜 星が見えた

負けた。
つうか、飽きた。
もう少し寝る。



 名も知らぬ島:五日目・夜 月も見えた

あっさり一回戦で負けてた。あーあー。
ていうか、割と楽しそうだったからいけるかと思ったら
早々に飽きて寝だすんだもんな。
何事かと思ったよ。普通あんなとこで寝ないぞ。
暴言も吐くし、お二人さんには悪いことしたなあ。俺が出ればよかっ
…無理だった。うん、悪いことしたなあ。
悪いことするのが仕事なのはユルレでなく俺なんだけど、はあ。
お前の知るあの男はもっと違ったじゃんかよ、俺のせいか?Tureのせいか?Envious――愚痴はよそう。

……お、犬発見。
飯だ飯だ。
| 日記 | 00:17 | comments(0) | -
五千年前:六日目
 名も知らぬ島:六日目・朝 日が昇る

その辺で拾った枝が丁度良い太さと長さだった。
即席の剣を作った。
適当なもので試し切りしてみれば何故か来る前に買ったトゥハンデッドソードより強かった。
粗略に扱いすぎたか。






 ******






 ――奴は俺を化け物と言うが、そう言う奴こそ化け物だ。

 青年は草陰に隠れて息を殺していた。
 鼓動の音は気にならないまま、心地よい虫の音を聞き、木のさざめく音の下で、暗闇を目で追っている。
 夜の闇、深い森の中だ。獣道すらない草木の中で、青年は何日も息を殺していた。
 『気配を悟られたほうが負け』だが、青年は隠れることにかけては誰にも負けない自信がある。
 しかしだからといって勝つ自信があるかと言うと、其れは皆無だった。倒す術が無いという訳ではなく、例えば相手が普通の人間なら何の苦も無く仕留められただろう。獣でも魔の物でもその事は変わらない。しかし彼の今の相手は――ある一人の男だった。そしてだからこそ彼は勝つ自信がない。
(頼むから、首ちょん切られたら死んでくれよな――)
 いや、少しぐらい硬直してくれればいい、それ以上は望まないから、と青年は思い直した。
 その首は数日前に切り落とした。その数時間後に心臓のある筈の場所に短刀を突き立てた。更にその数時間後に両腕を切り落とし全身を滅多刺しにし腑(はらわた)を引きずり出して、
 ……そこで青年は諦めた。諦めて、逃げることに専念したが、数日経った今でも逃げ切れていない。気配こそ感じないが、何故だかそう遠くない場所にいると分かる。
 膠着状態のまま何日過ぎたか、彼は数えてはいたが覚えてはいなかった。空腹はそっと草を摘んで凌ぎ渇きは朝露で潤したが、迂闊に動けば確実に音も無く剣の形をした何かが飛んでくるだろう。
(……あいつに笑われるかな)
 『どうせ逃れられないものを』、分かっていてわざわざ逃げる無様な自分を見て、かつての仲間たちはどう思うだろうか。
(だけど、死んだら終わりだぜ。死んだら……何もなくなっちまう)
 進んで死を選んだ仲間の一人を思い出した。彼のように『死んでいる』ままこの先何千年も過ごすのは青年は嫌だった。尤も青年の死はそれとは違うものであったし、また青年も其れを承知していたが、だからこそ受け入れることなど出来なかった。彼には来世など確実に来ないのだ。
 顔は動かさないまま、目線だけ上にあげる。月明かり星明かりも無い。新月なのか曇っているだけなのかは彼にはわからなかった。きっと上から自分たちを飽くことなく見つめている『彼』ならわかるのだろう。青年からすればそんなこと、聞く気もなかったが。
 光は無い。なら動くのは今か――そう青年が思った矢先、ふと気配がした。小さく草が擦れる音もする。そう遠くない距離だ。男が痺れを切らして動き出したか……青年は気配のする方向に目を凝らした。気配を感じ取ったからと言って容易に攻撃してはいけない。動いてもいけない。攻撃して、それが男でなく森に住む獣だったなら、その瞬間男に攻撃の隙を与えてしまう。彼はじっと、暗闇の中目を凝らした――、(奴だ!)
 さあと月明かりが彼らを照らし、(分厚い雲に隠れていただけだったらしいが、少なくとも青年にはそんな事を気にする余裕は既になかった、)ゆっくりと草を掻き分け進む男を見据えたまま、青年は表情を変えずに胸の短刀に手をやり、

 そんな青年を男が見た。

(――拙いッ)
 隠れることを諦めた青年が大きく横に飛び離れた瞬間、今まで彼のいた場所に轟音を立てて雷(いかずち)が落ちた。草むらの上で受身を取り、頬を伝う汗も其の侭に、大きく(そして短く)息を吐いて青年は男を見据える。落ちた場所では草が灰になり木々が小さく燃え出していた。小さな雷だったから火もすぐに消えるだろうが、連続して落とされたら一溜りも無い。
 長距離戦は青年からすれば圧倒的に不利だった。男も森を焼き尽くすつもりは無いだろうが、それでも青年の短刀が投げられたところであっさり避けることが出来る距離だ。かといって短距離だと男の剣が本領を発揮するし、中距離を保とうとすれば途端に男が走り寄ってくるだろう。青年は短距離を選び、短刀を数本投げつけると、避ける男目掛けて木の根にも足を取られること無く走り出した。見つかったからには再び隙を見つけない限り逃げることは出来ない。二発ほど雷が落とされそして両方青年が転がって避けたところで、男は剣を抜いた。起き上がると同時に投擲された短刀を剣の一振りで叩き落す。
 とうとう抜いた愛用の二本の短剣を両の手に握り、青年はまず右の短剣で振り下ろされた剣を受け流した。同時に左の短剣を男の脇腹に突き刺そうとするがやめて飛び退き、男の蹴りを避ける。飛び退きながら投げつけた短刀は再び弾かれたがその時には体勢を立て直し地を蹴っていて、弾いた剣の流れを強引に変えての一撃を両の短剣で受け止めた。そのままじりじりと力比べを始める中男が獰猛な笑みを浮かべる。
「今度は逃げねえのか?」
 青年も笑った。
「逃げるさ。……ヤバくなったらな」
 重い金属音と同時に飛び離れる二人。必死に息を整える青年に対して男は殆ど息を乱していない事が少々悔しく、青年は僅かに眉を寄せた。
 実際、危なくなろうがなるまいが、隙さえ見つけられれば即座に逃げ出すつもりでいる。それができないのは単純に男から隙が見出だせないのと、未だに男が勘違いをしているという何とも腹立たしい事実のせいだ。
「―――――」
 青年は男の名を呼んだ。答えはない。いや、答え代わりに凄まじいまでの殺気が飛んで来た。負けじと短剣を握り締めながら、絞るように声を出す。
「俺は―――だ、―――――。もう――――――じゃない」
 殺気が更に強くなった気がした。
「寝言は寝て言え」
「寝言じゃない」
「ならば戯言だ!」
 そこで二人とも口を噤み、僅かの間だが、静寂がその場を包む。
 やがて男が小さく息をついた。だらりと垂らしていた剣持つ腕を掲げ、ぶんと振る。そうして青年を睨みつけた。
「――戯言だ」
 青年もまた短剣を構えなおし、じり、と半歩引いた。
「俺はな、別にお前になら殺されてもいいって思ってるんだよ。殺されても仕方ねーって思ってる。……だけどな、誤解されたまま死ぬのはちょっとどころかかなり、嫌だ」
「戯言はいいと言ったぜ、――――――」
 今度は青年が息をついた。長く、肩まで落として息をつき、
「……んの」
 それから歯を食いしばった。
「いい加減理解しろよ分からず屋ッ! 俺は――――――じゃない! 俺の名は」






 ******






 名も知らぬ島:六日目・夜 月が笑う

犬は美味しく頂いた。色はアレでも結構美味しいらしい。いや、俺は食ってないんだけどな、塩漬けにして保存食にしてもいいよな。異様にしょっぱいのが難点だけど。ぶっちゃけ不味いけど。
俺達は基本的に、休憩は草原でしている。犬という食料に事欠かない事実もさることながら(いや、事欠いてるんだけどな)周囲に障害物も何もないから少々油断していても急に襲われるなんてことがないのは大きい。一応俺が毎回調べてるけど、罠なんかもないしな。草と草を結んだ、足を引っ掛けるのが目的のちゃちな罠ならあったけど。あとなぜか隠してもいない落とし穴もあったけど。まあ草が結構茫々に生えてるからなあ、割と見落としやすいのかもしれない。気をつけないとな。俺は落ちないけど。
目の前には森が広がっている。隠れやすそうだけど、その分気を回さないとな…
あーあ、日の光を浴びたいぜ。
| 日記 | 00:17 | comments(0) | -
五千年前:七日目
 名も知らぬ島:七日目・昼 日が照って

節分だ。

即ち豆だ。
豆だらけだ。

年の数だけ食うらしい。
故に、おれは窮地に陥って つまり

その

おれの目の前に 何処から来たのかおそらく五千粒以上の豆が

豆が

――勘弁してくれ、頼むから。
殺す気か。



 名も知らぬ島:七日目・夜 月が輝く

夕方になってふと見るとユルレが大量の豆の中に突っ伏していた。
何事。

経緯を聞いた。納得した。可哀想に。
俺なら今生きてると考えても11粒ですむから楽なんだけどな。

奴が「肉が食いてえ……」と呻いた。
可哀想に。
| 日記 | 00:16 | comments(0) | -
五千年前:九日目



 ******






 ――……貫いたその感触は、思っていたよりも重いものだった。

 しかし男はそれ以上何かを思う事をやめ、緩慢な動作で剣をずるりと引き抜いた。ぼたぼたと滴る血が自らの剣と目の前の青年の腹を染める。凡そ人のものでは在り得ないその真っ黒な血をどこか呆然とした風に見下ろし、それから漸く青年は膝をついた。両の手に握り締めていた短剣が地に落ちかしゃんと小さな音を立てて、握っていた手は貫かれた腹を押さえ、しかし辛うじて地面にうつ伏せに倒れようとはせずに震える瞳で男を見上げている。背の高い木々に隠れた空はもうすぐ明ける時間なのか僅かに紫が混じっていた。
「しぶといな」
 男は本心からそう思った。何の躊躇いもなく(そう、躊躇いなどあろう筈もない)剣を振り上げ右上から左下へと斬り下ろす。返り血が飛び苦悶の表情でとうとうどさりと倒れたが耳障りな悲鳴は一度も聞こえなかった。そう、思い返してみれば戦闘を始めてから今までついに一度もだ。いつもなら(いつも、と形容できるほど彼と行動を共にしていたという事実自体が、男にとっては腹立たしいことこの上なかったが)盛大に叫んですたこらと逃げ回り、とっとと自分の前から姿を消していただろうに。

 溢れ出る血溜が地面を黒く染めていく。男はそれを見ながらほんの僅か首を傾げた、(何故だ?)

 どうにも不可解だった。逃げるチャンスは本当に幾らでもあった筈だ。気配を読むすべは男より青年のほうが上で、青年は気配を消すすべも得意で、男と違って飛行することも出来て、……何よりこの目の前の、もう動かない青年の正体は形のない只の闇だ。本来の姿に戻れば剣もいかずちもすり抜けように、戻るすべもあの忌々しい吸血種を封じた以上思い出せているだろうに、態々人の形で剣を受け稲妻を避け、そしてひとがたから出ることのない侭斬り裂かれこの様である。平時の青年と違い過ぎるのだ。
 実際青年を追っている間、男は彼の気配を完全に見失っていたのだ。それでも探し続けたのは積年の恨みも確かにあるが、何より他にやる事が無かったのである。暇なら仕方ない、まあ探そうか、それ位の思いだった。身を隠しやすい森深くに逃げられた時点で半ば諦めていたのだというのに、今その対象が眼下にある。
(あの戯言か――?)男は戦っている最中に何度も交わした不毛なやり取りを思い出した。(しかし、戯言は戯言だ。何せこいつの名は)

「……ぐ……」
 青年が呻き声を上げた。僅かな驚きもあったが同時に男は納得した。これだけやられてまだ生きられるのだ、ならば確かに奴なのだろう。青年は震える腕を地面について立とうとしたようだが流石に叶わず、片方に力を込めてどう、と仰向けに倒れた。大の字で苦しげな表情で必死に息を繰り返す。痛みにぎゅっと閉じられていた瞳が僅かに開いて男を見た。
 男は青年を見返した。今直ぐ止めを刺そうか、それともこのまま放置して苦しみを長引かせてやろうか、どちらにしようか迷いながら見返して、そうして己の剣に目を向けた時男は気付いた。(苦しみ?)

 目の前の青年は脂汗をかきながらぜえぜえと荒い息をあげている。『奴』にそもそも痛覚など在っただろうか。どくどくと癒えることのない傷から鮮血が未だ溢れ出ている。何故『奴』のように闇へと溶けていかない? 気付けば青年の口からも黒い血は流れ落ちていて、色さえ除けばそれは確かに『ただの瀕死の人間』だった。
(……まさか)本当に『奴』ではないというのか。男の背中にひやりとした何かが落ちた。剣戟の音よりも大きくあの叫びが脳裏に響く。ならば、そう、ならばだ。
 目の前の、『奴』そっくりのこいつは、何なのだ――

「気が、付いた、かよ」
 その青年が切れ切れに言葉を紡いだ。限界が近いのか今にも閉じられそうな瞳がそれでも男を見つめている、訳ではないことに男は気付いた。(……何だ?)青年は男を見てはいない。男より上の、何かをじっと見つめている。それに気付くと今度はその表情にも違和感を感じた。致死の傷からなる苦しみのせいかと思っていたその険しい表情も、勿論それもあるだろうが、青年が見つめている対象へと向けているのではないだろうか?
 男が上に意識を向けると同時に青年がぎりと歯を食いしばる。
 そう、男は迂闊にも、その時漸く気付いたのだ。

 夜の闇ではない、あの『闇』が二人の






 ******






 名も知らぬ島:九日目・夜 雲に翳る

ごめん。
メッセージ遅れてないかもしれない。
チキンレース二連続なんだよ。

ていうか目の前のウィルオウィスプ(だと思ってたのに、何か名前違うらしいよ。あれ)から危険な匂いがばしばしするんだけどよ。
連勝ストップ確定だよなコレ。
| 日記 | 00:15 | comments(0) | -
五千年前:十二日目
 名も知らぬ島:十二日目・ 


















(日付のみのページを開いて放置されている日記帳を風が攫っていく)
| 日記 | 00:14 | comments(0) | -
五千年前:十四日目
 よく出来たものだ。
 Hurlerは胡坐をかいて座りながら思った。
(付け焼刃の知識でも、何とかなるもんだな……)
 勿論何度も失敗した。その度に書物を漁り直し、知り合いの魔術師の手を借り(そう、確か、その時だけ彼は自らの時に少なからず感謝したのだ)、失敗する度に減っていく媒体を前に何度も、いつの間にか必死になって挑戦していった。
 その結果があれだ。
(だが、肝心なところが焼け落ちてやがった)

 『あれ』は当時、そう、漸く成功したその時だ、不安定な体で辺りを見回し、不安定な声で言った。誰、とただ一言を。
 答えた。「Hurlerだ」
(「Hurler」)
(「そうか」)
(「     じゃないのか」)
「……待て」と言った。時折ぶれるそれから暫し目を離して媒体のほうに目を向ける。掴み取ると指の隙間からさらさらと落ちていく、そして少しは落ちきれずに掌に付いた。「      か?」
 それは少し安定した声で言った。(「あれ?」)そして首を傾げる。
(「じゃあやっぱ     なのか?」)
「……」頭を抱えた。最早元しか残っていなかったのか。問うた。
「お前の名は」
(「Neid」)
 ……頭に添えた手を離すことが出来なかった。

 偵察に行っていた奴が戻ってきた。
(「あっちにデッケえハムスターがいたぜ」)
「……はあ?」
(「でけーハムスターだっての。ホントどーなってんだろうなここの生態系」)
(お前もだろう)
 そう思った後で、(おれもか)と嘆息した。遺跡の中なだけあって、流石に外ほど明るくはない。
 荷物袋の中に小さな(そう、今となってはほんの小さな)皮袋を仕舞い、首を鳴らしながら立ち上がる。
 白い灰がまた少し砂に溶けていったのは……見なかったことにした。面倒臭い。






 ******






 名も知らぬ島:十四日目・夜 砂が目に

入らないけどな、別に。遺跡ん中じゃ天気わかんねんだって。
森とかがあるってことは…盛大に雨漏りがするのか小さな池や湖でもあるのか実は作り物なのかえーと他には、エアプラント?
植物には詳しくないからちっとも分からん。生命の神秘でいいか。このネタこないだも書いたよなあ…

そう、チキレばっかりでロクに書けなかったけど
(ちなみに今回もバッチリチキレだ、ふふん)
(ていうかPC不調で前々回ぐらいから凄い勢いで携帯投稿だ、ふふん)
(おかげで前回せっかくだったのにセリフ変更忘れた。…ふふん)
こないだからユルレが練習試合に参加するようになった。
…珍しい。
いや、ただ探索するのに飽きたってだけだろうけどな、絶対。
初めのときは二人組のお姉さん方、その次、つまりこの間は毛が代わりに…多分アレ苔なんだろうな、そんな兎(ユルレは当然のように食べようとしたけど逃げられた)(兎も招待されるんだなここ…)。
昨日は知り合いの剣士くんとこ。
……誰がボスだよ、聞こえてたぞおい。じゃあアレか。俺はボスに大概の場合くっついてるザコ敵Aか。戦闘参加しなかったからそれ以下だけどよ。
ボスなあ……






 ******






(「まあ、ボスってツラはしてるけどな」)
「どういう意味だ」
 日記を書いていた顔を上げてNeidが言った。拍子に力を抜いたのか、羽ペンが手をすり抜けて羊皮紙の上に落ちる。ペン先に付いたインクが関係のない箇所をなぞり、(「いけね」)と拾い上げた。
 別にインクも紙も余裕はあるのだが。思いつつ、砥いでいた得物をボロ布で拭う。小剣や短剣に比べれば慣れている分扱いやすくはあるが別段愛用しているわけでもない。命を預ける相棒とはそも、預けるべき命がないから言えなかった。そこの再び日記を書き出したある種の相棒はそういえば生前一対の短剣をそれは丁寧に砥いでいたが、思った瞬間にその相棒がこちらを見た。
(「俺の元愛人も偶には砥いどいてくれよ」)
 愛人とまで来たか。
「錆びてんだろ、ずっとほっといたからな」
(「うげ」)傍目から見ても分かるぐらい半透明な顔が歪んだ。(「なあ、そういや聞いたことなかったし気にも留めてなかったけどさ、まさか血糊の付いたまま鞘に突っ込んだりは」)
「忘れた」
(「うがあー!」)突っ伏した。それにしても忙しい残留思念だ。畜生、と呟き羊皮紙とペンを置いた岩場から離れると荷物袋を覗き込んだ。流石に漁ることは出来ない。砥ぎ石とボロ布を包めてその荷物袋に突っ込み、ついでに仕方ないから短剣を取り出してやった。一応二本とも取って置いた、うち一本を鞘から抜く。……錆びてはいない。もう一本も抜いた。やはり錆びてはいない。少々刃毀れはあるがそれはまあ、仕方ない。(「……」)安堵の溜息をついた。本当に全く手入れしていなかったのだが何故、考えようとしたが一瞬で放棄した。面倒臭い。手入れする必要がないならそれでいい。
(「ホークアイもファントムペインも無事だ……あーよかった」)名前までつけてやがる、とつい白い目で奴を見る。というかどちらも全く同じ形なのだが、どうやって見分けをつけているのか。
(「これでなあ、また使えたら最高なんだけどなあ……」)
「未練がましいことを」使えないようにした張本人は自分だが、別段詫びるつもりはなかった。
(「持つぐらいならイケルけど、振るうとなると流石になあ……こう、実体ない奴でも持てるようにしてくんねーの?」)
「幻術をそこまで極める気はねえし、んなことが出来そうな知り合いもおらん」
(「だよなー」)さして期待していなかったように言った。(「で、ボスの話だけどよ」)
「まだ言うか」短剣を鞘に仕舞ってまた荷物袋に突っ込んだ。
(「ボスっていうか、何かさあ、ひょっとして」)少し考え込むそぶりをした後言う。(「ライバル視されてんじゃねー?」)
「はあ?」思わず眉を顰めてしまったが仕方ないだろう。「何を突拍子もないことを」
(「……気のせいかな」)
「気のせいだろ。つうか、誰にだ」言うと、Neidは少し傾いた。引きつった顔で対象の名前を言う。
 少し考えて思い出した。あれか。
「ライバルってのあ、互いの力量が同程度ってのが今も昔も大前提じゃねえのか」
(「まあな」)
「且つ、互いを認め合った競争相手」
(「あー、うん」)
 曖昧に頷くNeidに言った。「駄目だろ」
(「駄目か?」)
「別段認めてやった覚えはねえし、あんな坊主に引けを取るとも思わん」
(「……あー」)可哀想に、などと呟いて奴は岩場へ戻った。日記の続きを書くつもりだったのだろうが、何故か少し経ってから戻ってきた。そして言う。(「次はタイマンだな」)
「……何でそうなる」心の底から言った。
 いーからいーから。今度向こうに言ってみよう、などと人の話を聴かず勝手に宣う奴を殴ろうとして殴れないのに気が付いた。本当、面倒臭くしてしまったものだ。
 荷物袋を見ているように言いつけ、巨大なハムスターとやらを確認する為立ち上がった。研ぎ終えた得物を担ぐ。
 ああその前に試合があったか。どっちでもいい、面倒臭い。
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Dungeon Dive 弄り同盟 Nm. Neid(No.195)
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↑なんていうかなんていうか。

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 どっちもまったりじぶんペースで。
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